IWCは2024年、現代においてわずか3ブランドしか成し遂げていない偉業を達成した。ケースを一新したポルトギーゼシリーズのリローンチが発表されるなか、IWCはもっとも難解な複雑機構のひとつ、セキュラー?パーペチュアル?カレンダー、別名エターナル?カレンダーを生み出したと発表したのである。

月と年の長さが異なることは読者もよくご存じだろうが、その事実がカレンダーの様式を問わず複雑性を与えている。標準的なパーペチュアルカレンダーは、うるう年の調整と各月の長さを考慮する機構だ。1年が365.25日(4年ごとに調整が必要)であれば、これで問題はないだろう。しかし厳密には1年は365.2425日である。つまり、100、200、300で終わる年はうるう年ではなく、400で割り切れる年がうるう年になる。このため、標準的なパーペチュアルカレンダーは100年に1度、調整が求められる仕組みになっている。

ただし、それは批判を招いた私の一般的な意見そのものではなく、その意見の表現方法と全体像を見落としていたことの両方に対してである。Watches & Wondersの期間中、何十本もの新作記事を書き、撮影をするなかで、IWC エターナル?カレンダーの外観について、無邪気な批評をしたつもりだった(単に私がポルトギーゼに興味を持たないだけかもしれないが)。この素晴らしい技術的偉業をもっと目立たせるために、より大胆で人目を引くデザインにできないかと思ったのだ。しかし、それを正確に判断するのは難しかった。この時計は展示会に間に合わせるため、ようやく完成したばかりで、限られた写真しかなく、実物を手に取る機会もなかったため、IWCが生み出したものの全貌を理解するのは容易ではなかった。

その思いは今でも変わらない(とはいえ、少しは印象がよくなった)。ただ、それをさらっと述べて次に進むのではなく、記事執筆を急ぐあまり、意図せず批判を長々と述べてしまったのだ。そしてこの時計は、結果GPHGで“金の針”賞を受賞した。本記事では、より思慮深く、審査員たちが何を評価したのかを改めて考える機会としたい。そして、彼らが見出したものはまさに圧倒的な出来栄えだった。


その偉業を成し遂げたほかのブランド

1985年にクルト?クラウス(Kurt Klaus)氏がデザインしたダ?ヴィンチ?パーペチュアル?カレンダーの発表以来、パーペチュアル?カレンダーはIWCにとって1980年代半ばから中核的な存在であり続けてきた。パテック フィリップを除けば、IWCほどカレンダーウォッチとの結びつきが深いブランドはほかに思い浮かばない。そのため、パテック フィリップがCal.89によって現代のセキュラー?パーペチュアル?カレンダーのコードを初めて解読したブランドであることは、驚くには値しない。

パテックは1972年、アメリカの実業家セス?アトウッド(Seth Atwood)氏のために製作したユニークピースの懐中時計にセキュラーQPを搭載し、複雑機構分野で最初の功績を残した。しかし、1989年のブランド創立150周年記念に際しては、Cal.89懐中時計に搭載された合計33のコンプリケーションに“復活祭の日付機構”を追加した(これは間違いなく、私がこれまでに見たなかでも最も素晴らしい時計のひとつだ)。さらに、この時計にはミニッツリピーター、グラン?ソヌリ、プチ?ソヌリ、スプリットセコンドクロノグラフ、均時差表示、恒星時、日没?日の出表示、季節表示、分点?至点表示、黄道帯表示、そして復活祭表示(570万年に1日の誤差)などが搭載されていた。その圧倒的な複雑さと重量感は、まさに驚嘆に値するものだった。

次に登場したのはスヴェン?アンデルセン(Sven Andersen)氏だ。彼はパテック フィリップのグランドコンプリケーション工房で熟練の技を磨き、1980年に自身のブランド、アンデルセン?ジュネーブを設立した。アンデルセン氏は実際にCal.89の開発に相談を受けたが、ほどなくして腕時計に応用可能な、よりシンプルなアプローチを模索し始めた。そして1996年、ウォッチメイキングの新たな時代を切り拓く成果を発表した。


Cal.89から始まり、アンデルセンを経てセキュラー?パーペチュアル?カレンダーを達成した次の人物は、アンデルセンの工房で修行を積んだフランク?ミュラー(Franck Muller)氏である。2007年に発表されたエテルニタス メガ 4によって、彼はその名を歴史に刻むこととなった。それは単にセキュラー?パーペチュアル?カレンダーを実現しただけではない。36もの複雑機構を搭載し、腕時計という枠組みで当時世界でもっとも複雑な時計を製作したことで、パテック フィリップを凌駕した点が高く評価されたのだ。

この希有なランクに加わった最大のサプライズは、今年初めにOnly Watchのために製作されたファーラン?マリのセキュラー?パーペチュアル?カレンダーである。これは、ムーブメント設計の巨匠ドミニク?ルノー(Dominque Renaud)氏と若手時計師ジュリアン?ティシエ(Julien Tixier)氏の技術設計と計画によって実現した。ブランドの歴史が浅いことに加え、カレンダーモジュールがわずか25個の部品で構成されていることから、私は非常に驚かされた。この時計はまだ一般販売には至っておらず、このような驚異的で手頃なムーブメントを広く普及させるための最後のステップが残されている。

そこでIWCの登場だ。市販品として提供されるモデルである。大口径ながらも実際に着用可能だ。そして、伝説の時計師クルト?クラウス氏が究極のパーペチュアルカレンダーを目指して始めた、伝説的な遺産の最後の一歩を担うモデルとして位置付けられる。

IWCの永遠の偉業

IWCがエターナル?カレンダーで成し遂げたことは、いくつかの点で非常に興味深い。まずは技術的な側面から見ていこう。

IWCが設計したすべてが、通常のパーペチュアル?カレンダーとほぼ同じケースサイズに収まっている。わずかに幅広で厚みが増した程度だ。プラチナケースの直径44.4mm、厚さ15mmというサイズは、手首につけると確かに重みを感じる。それでもフランク?ミュラー(あるいはパテック、こちらは両手でしっかり持つ必要がある)に比べるとはるかに実用的につけやすい。だが本当に重要なのはその内部だ。IWCはその正確性を称賛されているが、それをどのように実現したかは、その成果に劣らず興味深い。