これはアスペン?ワンとウブロのパートナーシップによる、3度目のコラボレーションモデルだ。
スキーリゾートグループ、アスペン?ワンとの長年にわたるパートナーシップから生まれた3作目の時計にふさわしい名称だ。冬季スポーツのスポンサーシップといえば、思い浮かべるのは特定のアスリートやイベントでありスキーや山の運営、ホテル、小売を統括する親会社ではないことから、これは確かに珍しいパートナーシップである。2019年から継続しているため実際のところ十分に成功しているのだろう。
春が始まろうという日に、私はなぜスキーをテーマにした腕時計について執筆しているのか? ちょっと、季節外れでは? そう思われるかもしれない。実は今年、ウブロがこの地で開催されるショーン?ホワイトの新たな冬季スポーツ大会“スノーリーグ”のスポンサーになることを発表したのだ。そこで私は2週間前、ウブロに同行して自分の目でこのイベントを確かめるべく、飛行機に飛び乗った。もちろん、新発売のメカ-10を実際に見るためでもあった。リゾート内の山のひとつで少しでも時間を過ごせば、このパートナーシップがどれほど根づいているかはすぐにわかる。至るところにウブロ ビッグ?バンの壁掛け時計があるのだ。そして当然のことながら、スノーリーグのパートナーシップにおいて公式タイムキーパーを担うウブロは、イベントの最高総合得点者となった日本の戸塚優斗選手と韓国のガオン?チョイ選手に、クラシック?フュージョンを授与した。
1月のLVMH Watch Weekで発表されたばかりの42mm版のメカ-10は、コンパクトになった新バリエーションだ。一方、このアスペン?ワンの限定モデルは、それ以前からの45mmのケース径を踏襲している。このモデルには、ウブロらしい素材とカラーの大胆な組み合わせが反映されている。ケースにはマットブラックのセラミックを、ベゼルにはシャープな印象のホワイトセラミックを採用。ストラップはブラックのラバーライニングが施されたホワイトカーフスキン製で、ブラックのステッチがアクセントになっている。45mmのケースは、メカ-10のムーブメントをダイナミックに引き立てる。シルバーのテンプやパワーリザーブインジケーターと連動するリニアラックギアといった要素が、ブラックのブリッジと強いコントラストを成し、メカニズムの構造美を際立たせている。
バランスホイールといえば、このキャリバーには見過ごされがちな意外なディテールがある。バランスホイールは実は反転された状態でブリッジのひとつの上に配置されており、時計をつけたときに正面からしっかりと見ることができるのだ。ムーブメントにはごく小さな赤いアクセントも散りばめられており、いずれも手巻きムーブメントが備える約10日のパワーリザーブ表示と関連している。そしてこのモデルでもっとも明確にパートナーシップを象徴しているディテールが、12時位置のインデックスだ。かつて鉱山で栄えたアスペンの町のルーツに敬意を表し、この位置にはインデックスの代わりにシルバーカラーのアスペンリーフのロゴが配されている。このロゴはオーストリア出身のデザイナー、ヘルベルト?バイヤー(Herbert Bayer)によるデザインだ。
ビッグ?バン メカ-10 アスペン?ワンは、米国のウブロブティックで取り扱われるスペシャルエディションで、価格は376万2000円(税込)となっている。
本作は洗練された技巧をまとい、まさにウブロらしさ全開の仕上がりとなっている。ブラックのスケルトン仕様メカ-10キャリバーに、コントラストの効いたマットセラミック製ケースを組み合わせた構成が印象的だ。ウブロがひとつのモデルに2色の異なるセラミックを使った例は、正直なところ記憶にない。これまではセラミックにゴールドやチタンを組み合わせるのが一般的だった。このセラミック同士のコンビネーションは見事に機能しており、率直に言って今後の定番コレクションでもこうしたセラミック×セラミックの“フュージョン”をもっと試してほしいと思う。これは“ツートン”という概念に対して、新鮮かつ魅力的なアプローチだ。
このモデルに搭載されているのは、45mmモデルに採用しているメカ-10キャリバーだ。つまり、今年発表された42mmモデルに見られたような、手仕上げによる面取り、やや洗練された書体やディテールは採用されていない。とはいえ無骨さが際立つブリッジ構造や、パワーリザーブインジケーターディスクに使われた中抜きのステンシル体フォントといった特徴は健在で、このムーブメントならではの魅力である。自社製Cal.HUB1201は、ウブロのデザイン哲学にこれほどまでにマッチするという点で、私にとっては今なお最もお気に入りのムーブメントアーキテクチャのひとつだ。
45mmのケースは、私の手首には少々大きすぎる(そろそろ本気で前腕の筋トレを始めるべきかもしれない)。ただアスペンで見かけた多くの人々のたくましい手首には、まるで最初からそこにあるかのようになじんでいた。ブランドロゴは控えめで、これがまた好ましいポイントだ。スキーリゾートの外でつけていても主張が強すぎて浮いてしまうようなことがないのがいい。同僚のマライカがかつて言っていたように、“ウブロはコラボが大好き”だ。アスペン?ワンと手を組んで、こうした特別な(なかには限定モデルも含む)エディションを展開したことには正直驚かされた。そしてこの地域にウブロの直営店がないにもかかわらず、不思議とこの取り組みには筋が通っている。スキーをしない人や、これまで一度もコロラドに行ったことがない人向けのモデルかと言われればおそらくそうではないだろう。しかしアスペンに頻繁に足を運ぶ人で、ゲレンデやアプレスキーの時間に気軽に楽しめる1本を探しているなら、間違いなく心引かれる時計だ。